HP【 月愛珠 】 昼下がりとある春の昼下がり、しかも穏やかな日差しが降り注ぐ公園とくれば、ほんわか暖かな空気が漂っているのが常であるがその日ばかりは違った。 「ちょ、ちょっと!翡翠さん!」 「何かな?」 春独特の穏やかな空気は、一人の少女の焦った声によって破られた・・・と言っても過言ではない。 当の少女はと言うと、叫び声を上げる原因となった、自分を抱き上げて(所謂お姫様だっこ)いる男に向かって文句(?)を言っている。 「『何かな?』じゃないでしょ!今何しようとしたんですかっ!」 これ以上はないというくらいに顔を近づけてきた男を少女はぐいぐいと片手で押し返す。顔を真っ赤にし猛抗議する少女に対して、『翡翠』と呼ばれた男は涼しい顔をしている。 「何って、足を痛めた花梨を運ぶ礼をいただこうかと・・・」 「ここがどこかわかっています?」 反省の色を見せない翡翠に対し、花梨と呼ばれた少女は、きっ!と睨む。翡翠はそんな花梨の様子も楽しみの一つでしかないようで、余裕の態度を崩さない。 「公園だね。」 「わかってるなら、どうしてそういうことするんですか?!公衆の面前ですよ!」 「私は気にしないよ。」 「私は気にします!」 「だけどね。」 そこで一度言葉を切り、翡翠は意味ありげに微笑んだ。 「今は花梨の声の方が注目を集めていると私は思うのだけれどね。」 「えっ?!」 ここに至って喧嘩(というか花梨の抗議)の声で周囲の注目を集めていることにようやく気がつき、花梨は真っ赤だった顔を更に赤くした。 「では、お礼の続きを貰おうかな。」 再び近づいてきた翡翠の顔を花梨は再び押し返すと、今度はなるべく小声でぼそぼそと文句を言う。 「・・・お礼というのは、こちらからの気持ちでするものであって、請求するものではないんです。」 その言葉を聞いた翡翠は、くすっと笑った。 「なるほど。ということは、人目に付かないところでなら、花梨からの口付けをいただけるという訳だね。」 その瞬間花梨は、ああ言えばこう言う翡翠を前に大きな墓穴を掘ったことを悟った・・・。 「そ、そんなことは言ってないでしょ。」 花梨は必死に否定したがもう遅い。 「同じことだよ。そういうことなら早く家に戻らなくてはね。」 「少しは人の話を聞いて・・・」 足早に2人の姿が公園から消えて、ようやく公園に穏やかな時間が戻ってくる。 時間が止まったかのように、2人に注目していた人々もそれぞれ動き出す。 そして人々は思うのだ。 (今日も穏やかな昼下りだった・・・お騒がせなカップルがいたことを除けばだが。) 終■背景素材■ 【Cha Tee Tea】様 |
画材:B5コピー用紙、インク、かぶらペン||ツール:Painter8 えな様のサイト月愛珠のお祝いの為に制作した物。 昼間の明るい所で、お姫様抱っこをされた挙句、キスしようとするのを、常識人である花梨ちゃんは、必死に抵抗。 しかし……傍から見れば、単なるバカップル……と、荒んだ精神から生まれました。 大変申し訳ないながら………自身の心の中ではダメ出しモードです。 ポーズからくる形の構造再認識。。。とか頑張ったのですがねぇ…。 途中でよく判らなくて、資料を探したのですが、丁度良い物が手元に無くて焦りました。 花梨ちゃんの服、スカートのつもりなのに、持ち上げられた時のしわの様子作りに失敗しました。 自信を持って描けるほどに、スカートと言う物を把握していない事に気付きました。 今後、要練習です。 やはり、自分で穿くことが無くなったので、よく判らない、というのは痛いですねぇ。 しかも、己の邪心により、翡翠さんは悪人+エロおやじ風味だし…。 サイトに展示するか、ギリギリまで悩みました(ノ"-; ) ***とこんな阿呆なコメントをしておいてなんですが、えな様から捧げ物展示の際に付けて下さった創作を頂戴して参りました。 私の心の中の酷い扱いとは違い、お騒がせながらも熱いカップルに仕上げて下さり、大感謝でございます。 私の邪心のなんて素敵な中和剤になってくれていることでしょうか。 理屈合戦最高!!(笑)*** 2004年4月2日完成 |